ゴイアニア~フォタレザ 2千キロの旅 第3話
みすぼらしいドアが廊下を挟んで左右にずらりと並んでいるが、ドアとドアの間隔を見れば、ホテルの部屋がどれくらい狭いか簡単に想像できた。
今夜はここに2部屋を取って、義父と彼女、彼とわたしと弟で眠ることになった。恐る恐るドアを開くと、4畳半くらいの室内にびっくりするくらい小さなベッド?ベンチ?が3個並んでいた。ベッドから落ちないようにとの配慮か、全てのベッドは壁際にくっついていた。部屋の一番奥に小さな洗面台が一つかろうじてあったが、想像した通りのお粗末な部屋だった。
彼の弟が「うわぁ~ 怪しい部屋~!」と奇声を上げながら中に入っていく。
それに続いてわたしも部屋の中へ一歩踏み入れた瞬間に
「パチパチパチッ!」
と一瞬目に変な痛みが走った。
変なムシがいるのかもしれないと、持参したアースマットみたいなのをコンセントにはめこんで、どう考えても共同のシャワー室を使う気にもなれないので、部屋にある小さな洗面台で歯を磨いて顔を洗って寝る事にした。
一応、シーツも枕カバーもきれいなものを付けてあるとは思ったが、念のために顔の当たる枕の上に持参のタオルを引いて眠る事にした。次の日の朝も早いのだ。
夢の中で、顔が痒くてしょうがなかった。。。
そして、それは夢ではなかった。。。
朝起きて鏡を見ると、そこには片方の瞼が「お岩さん」のように膨れ上がって、上唇だけ「オバQ」になっているわたしがいた。。。
そして、その腫れ上がった部分は、今にも破裂しそうなくらいパンパンに膨れ上がってジンジンと痛い上にかゆみを伴っていた。。。
そんな顔を誰にも見られたくなくって、頭からタオルをかぶってうつむきながら準備をするわたし。見せてみろという彼にも、あまりに醜い顔を見せたくなくって知らん振りしていた。頑なに下を向くわたしに彼も飽きれて「勝手にしろ」とつき放した。
もう、全てが嫌になって、言葉も出て来ない。車の中でもひたすら沈黙のわたし。
ホテルには朝食はついていなかったから、出発してしばらくしてからコーヒーの飲める所に車を止めて、みんな朝食を取りに行く。
「一緒に行こう」と彼がしつこくわたしの手を引くが、とても知らない人にこんな顔をさらし出したくなくって「行かない!」と車から一歩も出ないわたしに、
「いいから、行くんだ!」
と強引に彼がわたしの手を強く引っ張った瞬間、頭からかけていたタオルがはらりと落ちて、彼が一瞬固まった。。。
「唇だけかと思ってた。。。目も腫れてたの。。。可哀想に。。。」
彼のやさしい言葉に、一瞬涙が出そうになったわたし。
「冷たいミルクを飲むといいよ」
という彼の言葉に従ってお店に向かった。
ところが、朝食を済まして車に戻ろうした時、彼が思いっきり蹴躓いた!
どうやら長時間のドライブでブレーキとアクセルを交互に踏み続けて足首がかなり疲れていたらしく、蹴躓いた拍子に足首をひどくひねってしまい、一瞬立てないくらいに痛かったようだった。
そして、到底運転を続けられる状態ではなかったので、弟と運転を交代した。
すっかりブロークンなカップルとなってしまったわたし達だった。。。
つづく