生命について考える | ブラジル発 セクシー&キュートな洋服屋の生活裏話 (格安ネットショップもオープン ダンスファッション サルサ ナイトクラブに!)

生命について考える

pap


我が家には、5匹のジャーマンシェパードがいる。


ブラジルに移り住んで来た時にゆくゆく防犯になるようにと、オスとメスの子犬を購入して育てていた。オスとメスがいるわけなので当然、半年もするとメスが妊娠して2匹のオスとメスを出産。

我が家で誕生した初めての子犬という事で手放す事ができずにある程度大きくなったら牧場に連れていくという予定で育てていたのだが、情が移ってそのまま飼うことに。


もう、4匹以上は絶対おけないと思っていたけれど、娘犬が最初の出産をした時に一番元気のいいオスを牧場に連れて行った。知らなかったのだが、ジャーマンシェパード種は牛を追うには向いているけれど、小動物を襲う習性があるのだ。牧場管理人に預け、かなり厳しくしつけようとしたけれど、結局その甲斐もなくたくさんのひよこを襲っては食べるので牧場管理人家族に嫌われて我が家に舞い戻って来た。


「もう、4匹以上はおけない。」とわたしはこのオスを売るように言ったのだけれど、結局もたもたしている内に又もや情が移って置くことに。。。


前回のブログで現在我が家の改修工事をしている事を書いたけれど、今回の工事でそうそう簡単にメスが妊娠しないように犬小屋を二つ作ったのだけれど、工事に入る前にすでに2匹のメスは揃って妊娠していた。


約50日前に年長のメスは出産して現在子犬達を売りに出している。子犬の値段はR$100ほどでいつも売っているが(ペットショップでは$R250くらい)、これには訳がある。大切に世話をしてくれると思われる知合いには無償で上げるのだが、やはり、ブラジルで犬にR$100も払う人は可愛がって世話をしてくれると思うからだ。これを無償で誰にでもあげると言ったら、きっとみんな欲しがるだろう。けれど、責任感の方は期待できない。


話しは戻って、わたしとしては娘犬が出産をする前までに母犬の子供達を売ってしまいたかった。というのも、出産したばかりのメスはかなりセンシティブで出産場所の周りを他の犬がうろちょろしようものなら凄い勢いで襲いかかる。成犬達はそのことを承知しているからそうそうは近寄らないのだけれど、出産場所がわたしがうろちょろする流し台に近いため、ついわたしの後をついて来てすごい喧嘩になることもしばしば起こっていた。過去にそういう場面を見ていたので、これが子犬なら大変なことになるかもしれないと危惧していたのだ。


運の悪いことに先週、先々週は連休の関係である程度お金を持っている人達はどこかにバカンスに出掛けて通常だとすぐに売れて行ってしまうはずの子犬がまだ4匹残っていた。



そして、悲劇が昨日起こった。



うっかり娘犬が出産のテリトリーだと線をき引いているところに子犬が入りこんでしまったのだ。一瞬の出来事で、子犬が襲われてわたしが止めに入った時は子犬の体が10cmほど宙に浮いた。

泣いて逃げようとする子犬を捕まえて人間の赤ちゃんのように抱いてあやして、少し気持ちがおさまった後、外傷がないかよくよく見たが特に血も出ていない。うちの人を呼んで子犬を歩かせようとしたが、立つことはできても、腰が抜けたようにヨロヨロして動けない。骨が折れてるようではなかったが、念のために犬猫病院に連れて行きチェックしてもらったが、特に異常はなかった。


取り敢えず、安全な犬小屋の中でぐっすり眠らせることにして、夕方様子を見ているとお昼に食べたものをもどして下痢をしていた。そして、目が恐怖で焦点が合わないでいた。夜、外で寝せるのが心配でわたし達の寝室で寝かせることにした。


子犬を二階に連れていくと、他の犬がいなくて安心したのか、わたし達に甘えてしっぽを振ったり目も無邪気さを取り戻して少しほっとした。


そのまま寝かせていたが、数時間後に目覚めてまた下痢をして吐いた。わたしが処理をしてあげてると、甘えて尻尾を振っていた。子犬がちょっとした環境の変化などで下痢をしたり戻したりするのは、過去にも経験していたから、それほど心配しなかったが、恐怖を取り除いてあげないといけないと思いっきり甘えさせてあげるように努めた。


そして、少し眠った後にいきなりメスがアタックした時と同じような悲鳴を上げて飛び起きてカーテンの中に隠れようとした。抱きかかえてあやしてあげていたが、目がまた恐怖の色に戻ってしまった。


以前、ネットでジャーマンシェパードについていろいろと調べていた時に、この種は心臓が弱くて大きなショックでハートアタックをおこすことがしばしばあると書いてあったのが何度も頭をよぎった。。。


夜も遅くなり、わたし達も床に着き、わたしは脇に眠る子犬が吐き気をもよおしてうんうんうなるのをお腹に手を当てて気にしながうとうとしていると、何時くらいだったのだろうか。。。子犬が苦しそうに吐く息に合わせて「ア~ ア~」と泣き始めた。電気をつけると、水下痢をもらしていた。きれいにふいてあげて抱きかかえた時に。。。



子犬の体全体の力がないことに気づき、子犬が死んで行くのを感じた。。。



子犬はわたしに抱かれると体を伸ばし、硬直状態に入った。。。



なにもしてあげる事はできなかった。ただ、最後に思いっきり抱きしめてあげる事だけがわたしにできる全てだった。



結局、何が原因で死んでしまったのかは分からない。もしかしたら、襲われた時に内臓が傷ついたのかもしれないし、極度の恐怖とストレスから来る心臓発作だったかもしれない。知りたいとも思わない。



襲ったメス犬は自分の子犬を守るための野生の習性だったし、わたし達人間もできる限りの事を尽くしたと思っている。



最終的には、あまりに愛らしい子犬だったから神様が急いで自分の元へと呼び寄せたのだと考えたい。全ての生死は神様の司るもので、最初っから決まっているのだ。ここでいう「神様」とは、一つの表現であり、特別何かの宗教的偶像を指してはいない。少なくとも、神に召された子犬は、もうおびえる事もなければストレスも感じない。先に召された兄弟達ときっと楽しく遊んでいる事だろう。そして、また時が来たらこの世へと産まれてくる事は分かっている。


一つだけ救いだったのは、子犬が死ぬのを母犬が見なかったこと。この母犬はとても繊細で初めて死産を経験した時から憂いの表情をするようになった。犬は数を数える事ができないから、3匹の子犬が残っていて1匹いなくなったことははっきりとは分かっていないが、思い出したかのように、3匹の子犬達の匂いをかいで回っては、襲われた子犬の匂いを探している。犬には、病気の匂いのようなものを嗅ぎ分ける能力があるようだ。


明日、ちょうどうちの人が牧場に行くので、亡くなった子犬は牧場の脇に埋めてもらうことにしている。こういう時には、牧場があって本当によかったと思う。牧場に行く度に会う事ができる。名もない子犬だけれど、わたし達の心の中に永遠に生き続ける事だろう。この子犬に出会えてよかった。この子は、わたし達に大切なことを教えてくれた。もう、2度と同じことはあってはならないと。。。